研究概要 |
本研究では,随意運動におけるスキルの重要な要素である抑制系による制御がどのように獲得されていくのかを明らかにすることを主目的とした.平成14年度は,一側単独肢におけるrelaxationについて,上腕二頭筋及び三頭筋,指の屈曲伸展に関与する前腕指屈筋群及び指伸筋群の主働筋・拮抗筋を被検筋としてrelaxation時の反応特性を分析し,その学習過程を検討した.平成15年度は脚部に対象を移し,膝関節伸展筋である大腿四頭筋(大腿直筋を主として)と大腿二頭筋(拮抗筋),および腓腹筋(足部底屈筋)と前脛骨筋(足部背側屈筋)を被検筋として実験が可能なように,測定装置等を作り替え,実験の設定を大幅変更した.しかし,下肢筋の場合は重力の影響を受けやすいので実験時の姿勢設定が難しく,大腿部と下腿部で実験時の姿勢を変えざるを得なかった.方法上の問題む多く,詳細については現在解析中である. 《主たる結果と考察》 1.上腕や前腕では,十数回程度の試行後,ほとんどの被検者がrelaxation可能となった. 2.反応潜時を見ると,スムーズにrelaxationができるようになっても500msec以上かかっており,筋力発揮の場合の潜時と比べてもはるかに長い. 3.このことは実行中の筋活動をcancelするというタスクは運動中枢にとってかなり難しいものである. 4.下肢筋の方が上肢に比べrelaxationが下手であり,これは筋・神経支配比の違いによるものはではないかと推測された.
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