全国広島東洋カープ私設応援団連盟に所属する私設応援団「神戸中央会」を足場として、プロ野球私設応援のフィールドワークを実施した。私設応援団の凝集性を高めるためのホームページのもつ社会的機能、私設応援団連盟のプロ野球再編問題や広島市民球場建設に対する政治的行動など、特筆すべき事象を観察することができた。 昨年度に引き続き、「近畿カープ後援会」と「近畿広島県人会」の関連性について、特に前者の設立過程に注目し、関係者に対するインタビュー結果や両会の会報を資料として検討した。近畿カープ後援会結成のための共感の共同性を作り出したものは、単なる故郷に関する共通の記憶ではなく、カープによって上演されたV1の物語であり、それは広島から大阪に出てきて働くという共通の体験を再帰的に映し出す社会的ドラマであった。このドラマの持つ力によって、広島県人会の活動の一部であったカープの応援が、1つのアソシエーションとして県人会組織から独立したのである、一方で、1970年代後半から、カープによって同郷人的アイデンティティを持ち得ない人も入会し始め、同郷人的結合によらない結節が混在するようになった。このことは、大衆社会の成熟というマクロな社会変化を反映していると解釈できる。 本年度の研究結果の一部は、2004年8月10日に、The 2004 Pre-Olympic Congress(テッサロニキ)において、"Identity of Diaspora through Sport Spectatorship : A Visiting Team's Booster Club in Japanese Professional Baseballというタイトルで口頭発表した。またフィールドワークの結果の一部は、2004年9月24日に日本体育学会(信州大学)において、「プロ私設応援団の下位文化研究」として発表した。
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