研究課題
基盤研究(C)
日本のプロ野球には、私設応援団や後援会が存在する。それは、近代社会におけるスポーツイベントが創出したスポーツファンによって形成された、応援のための自発的集団である。本研究の目的は、私設応援団「神戸中央会」の参与観察を通して、「全国広島東洋カープ私設応援団連盟」と「近畿カープ後援会」の設立経緯と活動状況を明らかにすることである。1.下位文化研究の視点から私設応援団の参与観察を実施した結果、球場における示威的コミットメントや選手との距離の近さが彼ら独自の勢力資源となり、スタジアムでの典型的な応援行動である旗振りやリードは応援団の社会的勢力を儀礼的に象徴化する機能を有することが推察された。そして、官僚制やヤクザ的な擬似的家制度が、これらの彼ら独自の行動様式や価値基準に取り込まれており、官僚制は近代社会の主流から取り込んだものであり、擬似的家制度は社会の周辺部分に位置づけられた親文化である。ここに、応援団の下位文化の多層性を見ることができ、私設応援団の下位文化は、応援に関する彼ら独自の価値基準や行動様式に官僚制や擬似家制度をドメスティケイト(domesticate)することによって創られているのである。2.近畿カープ後援会の設立母体であった近畿広島県人会は、戦後の復興期において広島と大阪の間の物流のパイプ役として機能しており、広島県から近畿圏への労働力のスムーズな移動に貢献していた。目に見える形で広島との繋がりを意識することのできるスポーツ観戦は、広島県人会のメンバーにとって、大阪の広島県人としてのアイデンティティを確認する場であった。カープ後援会設立のための共感の共同性を作り出したものは、単なる故郷に関する共通の記憶ではなかった。それはカープによって上演されたV1の物語であり、広島から大阪に出て来て働くという共通の体験を再帰的に映し出す社会的ドラマとなっていた。
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