身体は他者の身体にどのように反応するのか。身体の近接状態やふれあう場合、そのリズム特性に応じて互いの心身はさまざまな変化をすると考えられる。本研究の目的は、リズミカルなダンス動作あるいは握手などの身体接触を伴う挨拶行動、そして特に意味の無いしぐさなどがどのようなコミュニケーション機能を有するものであるかを実験的に検討するものである。今回は指先を用いた二人の単純な棒運び動作を課題とした場合の呼吸活動から、互いのコミュニカティブな関係の変化を検討した。 実験結果から、棒運び動作の要領が理解され動作課題の目標が鮮明になるに従って動作のなめらかさが増し、呼吸活動の変化が認められた。動作課題は向かい合った二人が互いの右手人指し指の上に金属棒(15cm)を乗せて、定められた台上を同時に移動させるものである。2人の共同的動作がスムーズにそして速く行われるに従って、二人の呼吸パターンは類似して行く様子が観察された。特に呼吸は同期するのではないが、1周期に要する時間がほぼ同じとなる結果得られた。「気が合う」というコミュニケーション過程が呼吸活動から検討できることを示唆するものであった。 次の実験では、よく知られているダンス・ほとんど知られていない韓国のダンス(韓国ではよく知られている)・互いの身体がふれあう様子のビデオを鑑賞している時の自律神経活動の様子(呼吸・心拍・皮膚温)を指標に検討する。この実験は韓国においても実施し、他者身体に投影される心理生理学的変化から、しぐさや身振りとコミュニケーション機能について考察する。
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