身振りやしぐさなどの身体的表現、特に身体文化として形成された舞踊を対象として、それらの鑑賞時における精神生理学的検討から、リズムや動作の影響を考察する。 本年度は、韓国ソウル女子大学及び奈良女子大学の学生を対象に、日本と韓国の大衆的民族舞踊<阿波おどり・カンガンスオレ>ならびに芸術的評価の高い両国の伝統的舞踊で独舞<日本舞踊(黒髪)・韓国舞踊サルプリ>の4種類の舞踊鑑賞時の生理心理的応答について、実験的に考察した。4種類の舞踊はいずれも約3分間ビデオで提示された。各舞踊鑑賞後にそれぞれの印象を、(1)好き、(2)美しい、(3)一緒に踊りたい、(4)心が惹きつけられるの項目についていずれも「とてもそう思う」「そう思う」「そう思わない」「全然そう思わない」のいずれかに○印をつけてもらった。 <韓国の学生の場合>は、呼吸数は阿波おどり>カンガンスオレ>黒髪>サルプリであったが、統計処理の結果実験前の安静時とカンガンスオレ間の差が有意であった。心拍変動は、日本舞踊とサルプリが増加傾向を示したが、FFT(高速フーリエ解析)結果どの鑑賞時間にも差は認められなかった。舞踊の印象は、サルプリ舞踊は「美しい」が圧倒的に多く、カンガンスオレは「好き」「一緒に踊りたい」が多かった。一方日本舞踊については、「美しい」が少しあり、阿波踊りについてはどの項目もそうは思わないが多かった。 <日本の学生の場合>は、呼吸数は、阿波踊りとカンガンスオレ時に増加する傾向が認められた。心拍変動も阿波踊りとカンガンスオレ時に増大する傾向が示された。舞踊の印象は、日本舞踊とサルプリを「美しい」と感じ、「阿波踊り」を一緒に踊りたいとした者が多かった。以上の実験結果から、自分の国の舞踊において心理生理学的影響が強いことが示された。
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