この数年来、韓国舞踊治療学会会長(ソウル女子大学大学院)柳 扮順教授との研究と実践の交流の中で、身体文化についてのさまざまな視点からの比較および臨床的知見を得たいという着望を持った。今回は、柳 教授の協力を得て、韓国の女子大学生で日韓の代表的舞踊鑑賞時の心理生理的応答について実験を行った。また、日本の女子大学生においても同様の実験を行い、考察した。ただ、韓国への機器の搬入についていくつかの困難があり、韓国学生に脳波計測は出来なかった。 報告書のはじめに、韓国の舞踏(特にサルプリ舞踊)の精神性・動作性・リズムの特性をあげたが、それに対して日本の学生も韓国の学生同様「美しい」と評価した。しかし、女性のおどり(カンガンスウレ)に対しては、隊形・動作・リズムの変化が多く、馴染みにくい感じがしたようである。一方、韓国の学生たちにとって、日本舞踊(黒髪)は「美しい」と感じられたが、阿波おどりには予想したほどの好意的感じは見られなかった。心理生理学的応答(心拍、呼吸・脳波)としては、舞踊の違いは少なく、特に日本人の脳波において独舞と群舞の違いが顕著であった。群舞の鑑賞時には副交感神経系の亢進が示された。 舞踊的交流、また、自国の舞踊鑑賞時の心理生理的影響についての臨床的視点が示唆された。今後は、それぞれの舞踊の成り立ちなどの説明を加えた場など、被験者数を追加して検・考察を課題としたい。
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