研究概要 |
本研究では,ヒト(指導者)がヒト(顧客としてのスポーツ生活者)に対して対人的にスポーツサービスを提供するという,最もヒューマン・サービス業らしい組織でなければならない民間スポーツ・フィットネスクラブ経営組織を対象に,そうした不可視的な技術システムや戦略の特性について実証的に明確にするとともに,「ヒューマン・サービス組織の理論(記述)モデル」を構築することを究極的な研究目的とする。こうした研究目的を達成するために,平成14年度はスポーツサービス創造技術の特異性として,「1.多様性」「2.自律性」「3.タスク・アイデンティティ」「4.有意味性」「5.フィードバック性」という5つの次元を抽出することができた(「課題A」の達成)。 本年度は,「そうした5つのスポーツサービス創造技術の特異性とヒューマン・サービス組織との関係をどのように概念化したらよいのか」という「課題B」について追究することとした。すなわち,「先のような5つの事業(仕事)特性が求められる民間スポーツ・フィットネスクラブ経営組織には,どのようなヒューマン・サービス組織の構造と特性が適合するのか」について研究を進めた。具体的には,平成14年度における先のような研究結果を加味しながら,「ヒューマン・サービス組織の構造と特性」に関する質問項目を作成し,有意抽出法(典型法)によって選定された693ヶ所のクラブ(事業所)を対象に,郵送法による質問紙調査を実施した(有効標本回収数および回収率は,それぞれ218,31.5%であった)。その結果,ヒューマン・サービス組織の構造や特性を示す指標として,「階層平準化」「エンパワーメント性(裁量性)」「開放性」「革新性」「学習性」といった5つの組織特性を抽出することができ,体育・スポーツ経営学の領野におけるヒューマン・サービス組織の理論(記述)モデルを構築することができた。
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