研究概要 |
実験1:ラット後肢に1時間熱ストレスを加え、その後のHSP72およびHSP60,HSC73の経時的変化を分析した結果、HSP60はヒラメ筋、足底筋ともに熱ストレス終了直後に一時的な発現量の増加が見られた。一方、HSP72は、ヒラメ筋では熱ストレス終了直後〜4時間のあいだに、足底筋では熱ストレス終了から36時間後にそれぞれ有意な増加が見られた。HSC73についてはどちらの筋でも変化は認められなかった。これらの結果は「Journal Applied Physiology(Vol 92,p1097-1103,2002)」に掲載された。 実験2:局所麻酔薬であるbupivacaine(BPVC)をラットヒラメ筋に注入することにより筋線維を完全に破壊した後、新たに形成された再生筋線維内のHSP72の経時的変化について分析した。その結果、再生筋線維の横断面積の増加に先行してHSP72発現量の漸増が見られた。このことは、HSP72の発現が筋線維を形成するタンパク質の合成や保護に関与しているのではないかと推察され、これらの結果は「体力科学(vol51,p75-84,2002)」に掲載された。 実験3:骨格筋の肥大や速筋化をもたらすクレンブテロール(clenbuterol, CLB)をラットに投与し、ヒラメ筋単-筋線維内のミオシン重鎖(myosin heavy chain, MHC)成分の分布変化を検討した。コントロール群のヒラメ筋単-筋線維ではslow typeのMHC Iのみが含まれるのに対して、CLB投与群ではslow MHC Iとfast MHC IIaやMHC IIxが混在しており、このようなfast MHC isoformsの発現がヒラメ筋の速筋化をもたらしていることを明らかにした。この結果は「Acta Physiologica Scandinavica(Vol176,p311-318,2002)に掲載された。
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