研究課題
本研究では、身体障害者個々の疾患レベルに適した運動処方の実際について、3年間の継続運動が身体障害者にどのような影響をもたらすのかについて検討した。3年間の継続運動が可能であった対象者は、骨形成不全、頸髄損傷、脳性麻痺の障害を有する3名の身体障害者で、年齢は38歳〜47歳の範囲である。1週間から10日に一度の頻度(月3〜4回)で、それぞれの疾患に適した運動処方を3年間継続して行った。運動処方実施中は、心拍数、酸素摂取量、主観的運動強度(RPE)、組織酸素飽和度(StO2)及び総ヘモグロビン量(Hb量)を連続記録し、運動前後には血圧、血中乳酸及び内省報告を記録した。いずれの身体障害者も今年度の最終日に実施した運動処方では、心拍数-酸素摂取量の相関関係が認められた。心拍数とRPEの関係についても、心拍数-酸素摂取量の関係同様に高い相関関係が認められた。StO2及びHb量については、運動前安静時、運動中及び運動後のいずれの状態においても顕著な変化は認められなかった。運動前後の血圧は、運動後に拡張期、収縮期ともに高くなる傾向が認められた。血中乳酸は、運動前に比べ運動後におよそ4〜5mmol/mlの増加が認められた。運動後の内省報告では、いずれの対象者についても気持ちが良い等の報告を受けた。また、研究当初車椅子の自力走行が不可能であった2名の障害者は、3年目において自力走行が可能となった。以上のことから、身体障害者における3年間の運動処方は、身体障害者の生理心理に種々な影響を与え、運動の習慣化という生活環境の改善を可能とした。特に自力走行が不可能であった身体障害者の自力走行が可能となったことは、身体障害者の今後の生活に生かされるものと思われる。また、3年間の運動処方による継続運動によって、身体障害者の呼吸循環器系機能の改善を可能とし、一般的な健常者に近いレベルにまで回復したものと推察される。
すべて 2004 2003
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桃山学院大学総合研究所紀要 29巻・3号
ページ: 79-92
桃山学院大学総合研究所紀要 29巻・2号
ページ: 13-29