平成14年度は、筑波大学中央図書館に所蔵されている高知県教育会発行の雑誌『高知教育』と、「高知新聞」に掲載されている運動具販売店の広告を収集して分析した。その結果、以下のことが明らかになった。 1.高知県における運動具販売は1920年代になって活発化した。これは『高知教育』に掲載された広告の件数と、広告に述べられている業務拡大の状況、さらには運動具販売業者数の増加によって明らかである。 2.広告を掲載した運動具販売業者は、大正期においては、はじめは運動具販売の専門業者ではなく、商店や教材販売会社であり、運動具の需要の高まりとともに、体操服を含めた運動具販売の専門業者が登場し、売り上げを伸ばしていった。 3.そのような専門業者も、当初は他の府県において製造された商品や輸入された商品を仕入れ販売していたが、後には価格を引き下げるため、あるいは自社のアイデアを生かすという理由で、自社製品を開発し販売するようになった。 4.運動具販売の広告を手がかりに、高知県への外来の近代スポーツの普及を見ると、1910年代までは野球とテニスを中心にスポーツが実施されていたが、1920(大正9)年頃から陸上競技、水泳、卓球、サッカー、登山が普及し、1924(大正13)年頃からはバレーボール、バスケットボール、インドアベースボールが加わっていった。これらのスポーツは、学校、軍隊、官公庁、新聞社、病院、社会人のクラブで実施されていた可能性が高い。
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