平成15年度は、高知県以外の四国各県で発行された教育会雑誌及び地方新聞である「土陽新聞」「高知新聞」に見られる運動具販売店の広告の収集を行った。 高知県以外の四国の三県で大正期に発行された教育会雑誌には、残念ながら運動具販売店の広告はほとんど掲載されていないことがわかった。すべての教育会雑誌を細かく分析した結果ではないが、全国的に見ても、『高知教育』のように頻繁に数社が広告を掲載している教育会雑誌はあまり多くないのではないだろうか。『高知教育』にしても、広告が多いのはごく短い期間で、昭和初期になるとほとんど広告が見られなくなる。近代スポーツの普及期に、高知県では運動具販売店が販路の拡大を目指す活発な競争を展開し、昭和初期になって一定の顧客を獲得していたのではないかと推察される。 「土陽新聞」は欠号が多いものの、数件の運動具販売の広告が見られた。近代スポーツの普及を示すスポーツ記事も少なからず見つけることができた。 これまでの調査結果を踏まえて、『高知市史研究』創刊号に、「大正期の高知市における近代スポーツの普及」を掲載した。この論文は、『高知教育』の広告及び地方新聞のスポーツ記事を主な史料として、高知市における近代スポーツの普及の状況と、相撲の競技化の過程を明らかにしている。 今後は、近代スポーツの第二の普及期と考えられる戦後復興期に、運動具販売店が地方のスポーツの活性化に果たした役割を、地方新聞や教育雑誌を手がかりに、聞き取り調査の結果を加えながら明らかにしていきたいと考えている。
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