研究概要 |
(3年計画の1年目)両側肢の同時筋力発揮時に観察される両側性機能低下(bilateral deficit)現象は,同様に動作スピードでもみられることが反応時間課題などを用いて検証され報告されている.そのメカニズムは未だはっきりとは特定されていないが,中枢性の神経要因が大きいことがいわれている.しかしながらそれらの報告は健常な成人を対象としたものであり,発達過程にある子どものデータはほとんど報告されていない.申請者は,これまでにも子どもの動作調整能について実験的研究を重ね,これらの問題について取り組み,本研究課題へと経過をたどっている.本年度は3年計画の1年目であり,上記の反応時間課題遂行動作について,神経系の活動をとらえてより詳細に記述するための予備的実験およびその解析を行った.これまで継続的に行ってきた手法に従い,グリップ動作を用いた反応時間を,一側単独(右・左),両側同時,の各条件で測定した.これまでに不足している子どものデータを蓄積していくこと,および子ども数例について,主動筋のひとつである尺側手根伸筋から動作中の筋電図の導出を試みた.さらに反応時間課題遂行時に発揮されるグリップ力についても検討した.その結果,今回対象とした子どもにおいてもこれまで同様明確なbilateral deficitは観察されず,むしろ逆の傾向(bilateral facilitation)も観察された.これまでのいくつかの先行研究においては,どちらの現象もみられることが報告されているという事実もあり,そこではいずれの現象も神経系の中枢性が関与することを示唆している.今後はさらに詳細な筋活動状況を調べること,横断的な(発達)変化をみるために年齢ごとのデータを増やしていくことが必要であり,以降の年度で実施したい.
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