研究概要 |
(3年計画の2年目) 左右両側での反応時間のパフォーマンスの両側性機能低下(bilateral deficit)現象について,昨年度同様のグリップ動作を用いた実験を追試し,データの蓄積を行った.これまでの成果は,国際バイオメカニクス学会(2003年7月)ならびに日本発育発達学会(2004年3月)において発表している.Bilateral deficitの発現メカニズムについては,未だはっきりとは特定されていないが,動作発現に際しての大脳半球間の両側相互の抑制作用,すなわち神経の上位中枢が要因であるとする考え方が現在のところ優勢である.本研究はその神経系が発達段階にある子どもの特徴を明らかにしていくことを目的としている.昨年度の予備実験をふまえ,今年度の実験結果においては,Bilateral deficitは成人に比べて子どもではその出現がほとんどみられず,むしろbilateral facilitationが多く観察された.このことは,対象としている6〜9歳の子どもでは,大脳の両側を繋ぐ脳梁などの神経束がまだ未成熟であり,左右半球のやりとりが未発達であることが一つの要因ではないかと考えられた.また,運動指令の両側間の統合や抑制よりも,神経伝達の両側性経路など促進的な作用が優位に働いている可能性が示唆された. 本年度はより多くの横断的データを収集することが当初の計画であったが,大量数の被検者を確保することが難しく,今後も広く横断データを収集することは困難であることが予想された.最終年度は,可能な限り被検者数を増やすことも考慮しつつ,縦断的データ,ならびに筋電図を用いた筋・神経活動に着目して精査することを検討項目として加え子どもの特性をまとめていく予定である.
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