研究概要 |
(3年計画の3年目)左右両側肢を用いて力発揮した場合にみられる両側性機能低下(bilateral deficit)現象に着目し,昨年同様に実験を継続実施しデータを蓄積した.昨年度のまとめにおいて,縦断的データを加えることの必要性が見出されたことを受け,本年度は,これまでにデータを得た子どもの被検者のうち可能な者に対して同様の実験をくりかえしパフォーマンスの継時的変化をみることを加えた.子どもの実験結果においては,bilateral deficitが成人に比べて子どもでは出現しにくいことはこれまでの結果と同様であるが,年齢による違いよりもむしろ個人間の差が大きいものであった.縦断的な観点からみると,単純反応時間は加齢に伴って急速に短縮しこの傾向は各被検者とも同様であり,これまでに確かめられている単純な素早い動作の発達過程と同様の経過を示すものであった.このことは動作の様式,すなわち左右それぞれの片手単独,両手同時のいずれでも同様であった.しかしながら,同一側を一側単独と両側同時で比較してbilateral deficitの出現傾向には年齢による一定したものはみられなかった.しかしながらいくつかの傾向が観察され,その中には加齢に伴ってbilateral deficitの現象がみられるようになる,すなわち成人と類似した傾向に移行する事例が認められた.これらの経年変化等に関しては現在発表の準備中である. なお,これまでの横断的データについては,「グリップ動作を用いた子どもの一側単独・両側同時反応時間特性」(慶應義塾大学体育研究所紀要,44-1,17-23,2005)として報告した.
|