研究概要 |
本研究の目的は、有酸素運動トレーニングが体脂肪蓄積の改善を介して、脂肪細胞由来の抗動脈硬化性血漿蛋白アディポネクチンを増加させ,さらに運動トレーニングによる動脈性状の改善にこのアディポネクチンの増加が関与するとの仮説を検証することである。非活動的な中高年者を対象とし、有酸素運動1回30-60分、週3回以上、3ヶ月間継続する運動群と、そのまま非活動的な生活習慣を3ヶ月間維持する対照群とに分けた。3ヶ月間の前後に体脂肪指標、血清脂質、血清アディポネクチン濃度を測定した。3ヶ月間の運動トレーニング後に体重は有意に減少し、臍位の腹部断層写真により評価した内臓脂肪面積、皮下脂肪面積も有意に減少した。さらに、血清アディポネクチン濃度は運動トレーニング後に有意に増加した。しかし,動脈の硬化度の指標とした上腕-足首脈波伝播速度(baPWV)は3ヶ月間の運動トレーニングにより有意な変化を示さなかった.一方,対照群ではすべてのパラメーターにおいて変化が認められなかった。さらに運動トレーニング前後の体重、内臓脂肪面積の変化と血清アディポネクチン濃度の変化との間に有意な相関が認められた。また運動トレーニング前後のbaPWVの変化は体重および内臓脂肪面積の変化と有意な相関を示したが,アディポネクチンの変化とは相関を示さなかった.以上より、有酸素運動トレーニングは内臓脂肪蓄積の改善を介して、アディポネクチン分泌を増加させるが,動脈の硬化度の改善にはアディポネクチン以外の内臓脂肪由来因子が関与している可能性が示唆された。
|