研究概要 |
1.皮膚冷刺激がdynamic収縮とstatic収縮の筋活動に及ぼす影響 トレーニング効果は,筋の収縮タイプによって異なることが報告されている。そこでトレーニングへの冷刺激応用を踏まえ,dynamic収縮とstatic収縮における皮膚の冷刺激が筋活動様式に及ぼす影響について検討した。被験者は健常男子学生6名を用い,35%MVCを3秒保持し3秒休息の50回繰り返し行わせた。その結果,50回収縮中,static収縮ではnon cold stimulation (control)とskin cold stimulation (stimulation)間に明白な差は示されなかった。一方,dynamic収縮ではcontrolに比べstimulationにおいて,50回収縮中間より大きな筋活動量の増加が認められた。MPFでは両条件ともに変化は示されなかった。以上の結果から,皮膚冷刺激を用いたdynamic収縮トレーニングはstatic収縮に比べて有効である可能性が示唆された。 2.皮膚冷刺激を用いたトレーニング効果の検討 1の結果から,皮膚冷刺激を用いて低強度でのトレーニングを行い,高齢者への応用を検討した。被験者は健常男子学生6名を用い,dynamic収縮とstatic収縮トレーニングをnon cold stimulation (control)とskin cold stimulation (stimulation)条件で6週間行わせた。両条件は同側肢を用いるために,stimulationでのトレーニング終了後,6ケ月間開けてcontrolでのトレーニングを行った。トレーニングは35%MVCを3秒保持し3秒休息の50回繰り返して行わせた。その結果,トレーニング後の最大筋力は,controlに比べstimulationにおいて有意な増加が示され,その増加はdynamic収縮トレーニングにおいて大きかった。stimulationを用いた条件での筋力増加は,従来報告されている高強度トレーニングで得られた結果と同じ程度の増加であった。その増加は冷刺激による高閾値motor unitsの閾値張力の低下によるものと考えられる。従って,短期間の35%MVCという低強度のトレーニングで有意な筋力増加が得られた結果は,高齢者に対し筋への負担が少なくて高い利得が得られる訓練法として利用できることが示唆された。
|