研究概要 |
本研究は,非侵襲に随意筋力発揮中の筋単位長変化を観察し,長さ変化と運動単位活動の相互の関係について明らかにしようとするものである.筋単位長は,表面電極法により導出した運動単位活動電位波形の解析から算出する方法を用いる.本年度は,筋単位長計測の精度を高めることを目的とし,運動単位活動電位波形の解析を行った. 被験筋には内側広筋を用い,筋力発揮様式は等尺性膝関節伸展(90度)とした.運動単位活動電位は単極誘導法により導出した.筋力と運動単位活動電位は,データレコーダにてテープに記録し,その後,コンピュータに取り込み,解析処理ソフトを用いて運動単位活動電位波形の解析を行った。 筋線維走行上の数箇所から運動単位活動電位を導出し,波形の解析を行なった.多くの場合3相性波形(陽性-陰性-陽性)が導出できた.しかし,筋線維中央付近において第1陽性相がない2相性の波形が観られた.運動終板の位置を確認したところ2相性電位は運動終板から近位および遠位に各約10mmの範囲で導出されることがわかった.電位波形の陰性相は伝導成分であり,運動終板からの距離に依存してピークは時間差をもち発現する.しかし,運動終板付近では,陰性相ピークは距離に依存せず時間的に一致していた.活動電位は,運動終板から腱に到達するまで等速で伝導する.単極誘導法は,双極誘導法と異なり電気緊張性の成分をも記録する.したがって,陰性相ピークに時間差がないことは,運動終板付近では伝導成分に対して非伝導成分が混在していることを推測させる.非伝導性成分が何に由来するかは,今回の研究の範囲では明らかではないが,筋単位長算出に際しては活動電位伝導速度の算出が不可欠なことから,運動終板付近少なくとも約20mmの範囲で導出された波形は除くことが望ましいことが明らかとなった.
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