研究概要 |
随意筋力発揮における運動単位(MU)活動の合目的性およびメカニズムを考えるとき,筋の収縮特性を知ることは極めて重要な点となるが,随意筋力発揮中,非侵襲的に記録することは困難である.そこで,本研究では,筋線維力発揮能に影響を及ぼす因子の1つである筋線維長に着目した.単極表面電極法により導出した単一MU活動電位を解析することにより筋単位(MUを構成する筋線維群:MusU)長が推定できる.方法の精度の確認を14年度に行い,15年度には,発揮筋力とMusU長の関係および持続的筋力発揮時のMusU長の短縮を観察した.本年度は,MusU長の変化が運動単位間でどのような相互関係をもつのかを明らかにするために,2つの実験を行った.筋力発揮様式は等尺性膝関節伸展とした. 【実験1:協働筋群間のMusU長変化の関係】 協働筋の内側広筋および外側広筋におけるMUを対象として,持続的筋力発揮時のMusU長変化を同時に観察した.3分間の筋力発揮により両筋のMusU長は相反する変化ではなく,両者とも時間とともに短縮した.VMでは約4%,VLでは約6%の短縮であった. 【実験2:振動刺激誘発収縮時の筋単位長変化】 随意筋力発揮において表面導出可能なMUを,振動刺激により活動参加させた.MUのFthは,随意筋力発揮時より振動刺激時のほうが約40%低値であり,振動刺激時には随意筋力発揮時とMU活動が異なることが確認された.3分間の振動刺激によるMU放電間隔変化は随意筋力発揮時とほぼ同等であった.MusU長指標は,約2%短縮し,随意筋力発揮より低値であったが,明らかな相違は捉えられなかった. 以上,本年度の結果から,等尺性筋力発揮におけるMUの筋単位長短縮は,協働筋群間で相反するものではなく同時に生じている現象であることが明らかとなった.MU活動が異なるとき長さ変化が異なる可能性を見出したが,更なる検討が必要であると考えられた.
|