本研究の目的は、様々な筋における運動単位の発射様式を明らかにすることにより、筋間における力調節の神経制御メカニズムの異同性を脊髄レベルで明らかにすることである。この目的を達成するため、De Lucaが中心となって開発したprecision Decomposition法を用いて、運動単位の動員閾値および発火頻度を解析することとした。しかしながら、precision decomposition法は、運動単位を正確に同定できるアルゴリズムではあるものの、解析に要する時間と手間は、他の解析プログラムと比べると多大なものとなる。そこで平成15年度においては、平成14年度から継続して、下肢の大きな筋の代表として「内側広筋」を対象に実験を継続した。その概要は以下のとおりである。 被験者健常男性5名であった。被験者の右内側広筋にガイド針を用いて四極ワイヤー電極を刺入し、筋内電気活動の記録・解析をおこなった。力発揮の課題として、リラックスした状態から2.5秒かけて50%MVCまで力漸増(20%MVC/s)、続いて50%MVCの力を3秒間保持、その後、2.5秒かけて0%MVCまで力漸減(-20%MVC/s)させる力曲線を被験者の前にモニター表示した。被験者は、力目標に合わせて力発揮をおこなった。その際記録された力信号と筋内電気活動を同時記録し、運動単位の動員閾値、脱動員閾値、および平均発射頻度を解析した。その結果、動員閾値と脱動員閾値との間には強い正の相関関係(r=0.940)が認められた。さらに、平均発射頻度と動員閾値および脱動員閾値との間には強い負の相関関係(r=-0.891、r=0.800)が認められた。得られた成果は、国際バイオメカニクス学会および国際脳研究機構神経科学学会において発表された。
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