今年度は、主にドイツの体操(トゥルネン)協会のアソシエーション的な機能に関する研究をおこなった。 研究の成果としては、まず第1に、立命館大学衣笠総合プロジェクト「公共研」において、「19世紀ドイツの協会組織にみられる<個と共同性>-トゥルネン協会の事例を中心に-」と題する報告を行い、それは同プロジェクトの「公共研会報-人文・社会科学における「公共」概念の総合的研究-」誌に掲載された。そこでは、最初にアソシエーションとしての結社の誕生と市民社会における意義について、コルポラツィオンとの関係や「階級なき市民社会」ともいうべき初期自由主義の変質の問題などと関連させながら論じ、.その上にたって、同時代の有力な結社であった体操協会の動向を具体的に解明している。 第2、上記の成果とも関連するが、「アソシエーショシの歴史と現代の公共圏」(佐藤嘉一編著『<方法>としての人間と文化』所収)という論文のなかで、体操協会など近代ドイツのアソシエーションの特徴をフランス、イギリスのアソシアシオンやサロン、クラブ、コーヒーハウス、パブの状況とともに概観し、さらに日本にける公と私観念の歴史的展開と現代の相互扶助的な活動の意義と限界について論じた。近代ドイツの体操協会との関連でいえば、上述の市民社会におけるアソシエーション的機能のようにみえる会員に対する各種支援(会費減免、葬儀支援、職業斡旋など)が、実は結社の前近代的な特質(パターナリズム、名誉裁判など)を根拠としいる場合もあり、協会の深部で命脈を保っているこうしたコーポラティブな状況を解明した点で、従前の研究にない成果を得られたように考える。
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