研究概要 |
2004年度は、本研究の最終年度でもあることを踏まえ、研究のキーワードにもなっている市民参加と相互扶助に特化した内容の論文の作成、ならびにそれを題材としたドイツ研究者との交流に重点をおいて研究に取り組んだ。 前者に関しては、「ドイツ初期トゥルネン協会における社会参加と相互扶助-トゥルナー自主消防団の活動を中心に-」と題する論文を山口定・松葉正文他編『現代国家』(ミネルヴァ書房、2005年3月刊行予定)に発表した。この論文は、本研究の根幹をなすべき性格のものであり、体操協会(トゥルネン協会)が近代ドイツの市民社会を形成する重要な受け皿であったことを、多くが体操協会から誕生したトゥルナー自主消防団の実際の活動と会員の相互扶助行為に注目して実証できたと判断する。とりわけ、個々の自主消防団と体操協会との関係、各種共済金庫の中身の一端を理念だけではなく具体的な諸活動を通じて明らかに出来たことの意味は大きい。このような視座は従前の体操協会史研究はもとより、ドイツの市民社会史の領域においても考慮されてこなかった事柄であり、その意味でもドイツ体操協会史はもとより、広くドイツ近代史研究においても重要な成果であるといえよう。 後者に関しては、チュービンゲン大学スポーツ科学インスティテユート、O.グルーペ教授ならびに、ミュンスター大学スポーツ科学インスティテユート、M.クリュガー教授との意見交換において、本研究の特長を確認することができた。両教授はドイツのスポーツ科学の代表紙である"Sportwissenschaft"の編集責任者(発行人)でもあり、今後、本研究の独語版の作成を検討したいと考えている。 なお、本研究のキーワードのひとつに「公共圏Offentlichkeit」があるが、この「公共圏」をめぐるスポーツ問題について日独スポーツ科学学会で発表した内容をまとめた論文、Eine kritische Betrachtung uber die Offentlichkeit des Sports in Japanを、R.Naul u.a.(Hrsg.), Globalisierung des Sports : Zur Rolle der japanischen und deutschen Sportwissenschaft, Kyoto 2004.に発表した。近代ドイツの体操協会にのみを題材とした論文ではないが、しかし日本のスポーツクラブなどを対象化する意味にいおいて同体操協会の相互扶助行為の一端について述べられている。
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