研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、19世紀前半に結成され始めた体操協会の機能について、それを市民参加と相互扶助の観点から考察することにある。諸階層、異年齢に属する人々から構成される体操協会は、同時期の(男声)合唱協会、射撃協会そして自主消防団などとともに、新たに形成されつつあったドイツ市民社会の担い手として位置づけられるべき存在で、これら結社は市民的公共として相応しい性格を具備している。本研究では、上記の研究目的を果たすために、体操協会の規約類、市の消防・救援活動などへの参加に関する史料(議事録、統計資料、機関紙など)を収集し、体操協会の相互扶助的な活動(各種金庫の創設、体操協会が守備範囲とする蔵書管理、図書貸し出し業務、遍歴職人への支援業務など)、自主消防団による消防・救援活動実態を解明しようと心がけた。3年間の研究成果については、第1に、19世紀における体操協会の市民参加と相互扶助に関する1次史料を収集・整理できたことである。とりわけ、体操家による自主消防団の具体的な活動を解明するための史料はドイツの学界でも未整理状態であることから、研究史の面においても重要な成果をもたらしたといえるだろう。第2に、体操協会内の遍歴職人に対する各種支援の実態を協会内の相互扶助の観点から解明できたことである。この点については、例えば、各体操協会が発行する体操家証明書を地方文書館(アルヒーフ)で入手・活用できたことが大きい。第3に、第1の点と関連して、体操家による自主消防団の活動を実証研究として発表できたことである。管見の限り日本で始めて紹介された自主消防団に関する論文を通じて、従前の体操協会像と比較して、その活動内容の範囲が間違いなく広がったように考える。加えて、ドイツ歴史学では初期自由主義ならびに近代市民社会の成立と変質との関連で協会組織の内実が再検討されてきており、本研究が市民社会におけるアソシエーション的各種支援(負傷による生活援助、葬儀支援、職業斡旋等)を体操協会・体操会消防団という具体的な組織を通じて解明できたことは、単にドイツスポーツ史のみならず、ドイツ近代史研究においても研究成果を提供できたものと判断するものである。
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現代国家と公共性(山口定他編著)(ミネルヴァ書房) (予定)
Modern nation and publicness (Yamaguchi, Y. (ed.)) (Minervashobo) (schedule)
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<方法>としての人間と文化(佐藤嘉一編著)(ミネルヴァ書房)
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Human and culture as >Method< (Sato, Y. (ed.)) (Minervashobo)
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公共研会報-人文・社会科学における「公共」概念の総合的研究 第6号
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Koukyokenkaiho No.81
立命館大学人文科学研究所紀要 No.81
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Research on modern Europe (Aruga, I. (ed.)) (Minervashobo) No.8:Sport
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Memories of Institute of Humanities, Human and Social Sciences (Ritsumeikan University) No.81