本研究は弱視者のスポーツビジョンに注目し、弱視者のスポーツビジョンの特徴を明らかにするとともに、一定期間のビジュアルトレーニングがパフォーマンスに及ぼす影響を検討することを目的とした。弱視者のスポーツビジョンについて検討した結果、弱視者の横方向の動体視力および眼と手の協応動作の結果は、晴眼者よりもかなり低く、個人差も大きかった。スポーツビジョンの測定においては、対象者の視野の状況が結果に大きく影響を及ぼしており、視野障害が重度の者では、特に測定結果がかなり低かった。スポーツ活動経験からみると、弱視者では視力が同程度であれば、これまでのスポーツ、特に球技スポーツの経験者の測定結果が高いことが見られた。また、弱視者における一定期間のスポーツビジュアルトレーニングが弱視者の視機能やスポーツパフォーマンスに及ぼす影響を検討した。ビジュアルトレーニングとして、横方向の動体視力計、目と手の協応動作測定機によるトレーニングと、パフォーマンストレーニング(ボール移動の視覚的追跡、ボールのヒッティング)を週に2回、約2ヶ月間実施した。トレーニング前後に横方向の動体視力と目と手の協応動作、スポーツパフォーマンスの測定を行い、ビジュアルトレーニングの効果を検討した結果、いずれの対象者においても横方向の動体視力と目と手の協応動作については、あまり変化はみられなかった。スポーツパフォーマンスについては、ボールの視覚的追跡やヒッティングにおいて、若干のトレーニング効果がみられた。また、対象者は自覚的に、トレーニングにより周辺状況について見やすくなったと報告していた。弱視者のスポーツビジュアルトレーニングは、対象者の視覚障害の状況によるが、ある程度の有効性があることが示唆され、今後はより有効なビジュアルトレーニングを開発していくことが課題と考えられた。
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