研究概要 |
平成15年度において,本研究が明らかにしたのは以下の点である.本研究は1980年代と1990年代における北海道の産業集積を明らかにし,その集積に対する公共投資の影響を検討した.分析資料としては事業所統計と住民基本台帳による人口を用い,1981,1986,1991,1996,2001年における対人口特化係数を算出した.なお,業種は標準産業中分類を用いた.このデータを用い,行に市町村×年次,列に業種を配した地理行列を作成し,因子分析を施した.業種を因子化して,各因子における標準化得点の年次変化を市町村別に検討したところ,都市に集中していた産業が,高速道路など交通インフラ整備が行われた地域へと分布範囲を広げていた.さらに,公共投資との関係を見ると,北海道全域における投資が道央地区の生産誘発を進め,結果として道央における都市軸への産業集中度を高めていた.また,公共事業の生産誘発をみると,サービス業が高く,中間投入に占める第3次産業の割合も増加していることから,北海道では公共投資によって経済サービス化が促進されていることが判明した. 以上のように産業集積がなされた北海道であるが,全国のGDPに占めるシェアは低下していた.特に,北海道では製造業の割合が低く,1人当たりの生産性も全国平均より下である.また,第1次産業は全国平均よりも生産性が高いものの,近年低下を続けている.北海道では1人当たりの社会資本ストックが他地域より大きいものの,1人当たりの所得は低く,社会資本整備が十分な生産誘発に結びついていないことが明らかになった.
|