サンフランシスコのジャパンタウンにおいては、その再開発過程における活動主体(アクター)の行動・言説に焦点をあてて分析を進めた結果、市再開発公社及びその方針に呼応して資本進出した近鉄アメリカとこれに反発する立ち退き反対同盟(CANE)の対立を軸に、再開発公社に協力する再開発推進派(NCDC)、独自に住宅開発を目指す日系アメリカ人宗教連盟など、さまざまな社会集団のせめぎあいのなかで再開発という都市過程が進行した状況を明らかにした。また、今日のジャパンタウンにおいては韓国系施設の割合も増加しつつあり、新たな社会的対立が見られることなど、現代の動向と課題も考察した。 シアトルの複合アジア系エスニック・タウンである「インターナショナル地区」においては、ここ10年余の歩みにおいて、エスニック・タウンの発展段階が異なることによる地域的分化の諸相が明らかとなった。また、シアトルの過去の中国系施設については、市民住所録から中国系の姓を基に中国系施設を個別に抽出し、それを大縮尺地図を基図に用いてマッピングを行なって、19世紀末から20世紀初頭の最初のチャイナタウンの位置と状況を精密に明らかにし、1886年の反中国人暴動前にすでにチャイナタウンと言ってよい営業施設集積が見られたこと、さらに1900年から1910年にかけて施設立地に細かい移動が見られたことなどを明らかにした。
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