(1)歴史的に著名な丹波栗の産地(京都府綾部市)についての調査結果: (1)栗の伝統産地が里山型の産地として形成されてきたこと、同時にその背後では消費地としての中心都市・京都の存在が強く関わっていたことが推察された。丹波栗は、京都という都市を背景に有名になったもので、いわば都市型社会の先駆的な土地利用作物として展開してきたといえるのではないか?一方、(2)今日の産地の状況は、高齢化問題、林野の荒廃と獣害などの問題に直面する一方、輸入栗などの影響が強まる中で極めて停滞(後退)的である。粗放作目の栗の生産規模拡大は実質的に困難である。生産者が良質・大栗を厳選し、消費者と個別的に連携する動きが注目されたが、さらなる事例分析が必要である。 (2)菓子製造会社が自ら栗栽培を行う事例(宮城県)についての調査結果: (1)古川市にあるM社の事例:栗をせんべいの素材に利用し商品化しているが、それ以上に特徴的な点として栗園を市民に開放して、栗園を公園的なもの、あるいは人的な交流の場とすることを指向している。(2)仙台市に本社をもつS社の例:水田とともに栗園を所有し、栗園の管理は専門技術をもつ農家の支援を受けつつ、労働力は会社の従業員をあて、全体として会社の経営効率化と地域一体化を図っている。二つの事例は、農家による粗放作目の経営維持が困難になる中で、それを全く新しい観点から展開する方式として注目される。
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