研究概要 |
大都市地域における働きながら子育てをしている女性の労働および子育て環境の国際比較を,特に地理学的な視点からのアプローチにより分析を試みた。以前からの東京大都市圏の出生率の地域差や保育園等の行政サービスに関する自治体間格差に関する筆者の研究成果を踏まえ,3年間の研究プロジェクトの1年目は,1ヶ月余りスウェーデンのストックホルム郊外のナッカ市を中心に調査・研究を実施した。 1.保育園の空間的配置分布図を作成することにより,日本と比較して保育園立地の密度が高く,かなりの地区で徒歩圏内に2〜3カ所の保育園が立地していた。スウェーデンの自治体は法律により子供の居住地の近くに保育園を配置しなければならない。ナッカ市役所はスウェーデンでも"GISコミューン"として知られており,GISの活用が進んでいた。デジタルマップの提供を受け,GISを使った空間分析が可能となった。特に集合住宅地区と戸建住宅地区を区別する地図データにより,特に集合住宅地域では徒歩圏内で保育園が多く立地していた。土地利用権に関する公的な権限が強いため,都市計画が合理的に機能していた。その他,経営主体別,規模別や保育理念の違いを検討した。 2.働く女性の時間地理学的分析子育て中の働く女性6名にインタビューし,典型的な平日のスケジュールを調査した。事例はあまり多くないが,(1)交通計画や都市計画の成果から,通勤時間や保育園までの送迎時間が短かった。(2)家事と育児を夫がかなり参加している。(3)労働環境の違いにより両親の帰宅時間が早い。(4)子供を保育園に預ける時間を短くする努力をしていた。4時ごろまでには子供のお迎えをする。(5)母親は労働時間を20%減らし対応していた。(6)日本に比べると女性に対する差別はかなり軽減されているが,スウェーデンの女性たちは不満を懐いていた。
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