研究概要 |
少子化の問題の解決策として保育園を増設し,子育て中の女性を就業可能にする政策検討されている.1980年代後半から先進諸国の出生率と女性の労働力率の逆相関が出現した.働く女性の子育てと就業の両立ができる社会的条件を整備していくが,結局は出生促進という人口学的目的を実現させることにつながっていくことが,北欧諸国の実例から明らかになった.本研究ではそのようなヨーロッパ諸国の出生率と家族政策との関連の文献サーベイを行うとともに,保育サービスを中心に国際比較を行った.子育てに関する国家の役割は,福祉国家類型によってかなり違っている.社会民主主義福祉国家の典型であるスウェーデンのような福祉国家は子供を公共財とみなし家族政策を実施する.残余主義的福祉国家の典型であるアメリカは,国家は介入せず、保育は個人の問題とみなされ、市場による保育サービスが供給されている.アメリカの場合は産休や代替所得給付などの労働者を保護する制度は未整備であるが、女性の労働市場へ参加が民間による保育サービスの増加によって支えられている.平成14年8月はスウェーデンのストックホルム郊外での調査を実施した.平成15年の8月には、オハイオ州コロンバスで調査を実施し、大都市圏での保育サービスの供給の空間的なパターンを把握した。要扶養世帯扶助制度はAFDCから女性の労働を支援するTANFに取って代わられ,低所得者世帯に保育料を補助する制度に政策転換された.都市の低所得者居住地区と郊外の中産階級の居住地区とでは民間保育サービスの供給のあり方が違っていることが認められた。GISを利用した地図化の作業を進めつつ,都市地域での「女性の貧困化」の問題を検証した.
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