研究概要 |
都市や地域の発展の基盤ともいえる交通インフラストラクチャーは,さまざまな要因にともなって変化していく。技術革新によって新しいインフラストラクチャーが生まれ,経済発展の結果としての利潤がそのインフラを整備するために投じられる。整備された交通インフラはさらなる経済発展を促し,これがまた新たな交通インフラの充実を可能にする。つまり,交通インフラと都市や地域の発展の間には相互既定的な関係があり,好循環がつづくかぎり都市・地域と交通インフラは拡大の方向に進む。 本研究は、都市・地域発展と交通インフラの相互関係を第2次大戦後から今日までの期間を対象として地理学的視点から明らかにすることを目的としている。研究第1年目の本年は,交通地理学,交通経済学を中心とする既存の研究を評論する作業を行った。残念ながら,本研究のように半世紀という長い期間を対象として交通インフラと都市・地域発展の関係を明らかにする試みはほとんどない。近代の研究分野では交通の変遷という視点から研究が行われているが,「現代」を対象として通時的に地域研究を行う事例は皆無に等しい。 大都市は交通需要も多く、多種類の交通インフラが時代に応じて整備されてきた歴史をもつ。第2二次大戦後は、都市間鉄道のほかに市内電車,バスが公共交通機関として利用されたが,やがてモータリゼーションの波にもまれていく。地下鉄が市内電車に代わって登場し,自動車が公共交通機関を脅かす存在として認識されるようになる。この間,郊外化が進み,また都心部を中心に再開発も行われた。そのいずれにおいても,交通インフラの拡充と地域発展の間には相互関係が存在しており,両者の結びつきは強固である。ただし,両者の関係には地域性があり,都心部,市街地,郊外,港湾などの場所ごとに異なっている。こうした地域性を考慮しながら,次年度は実証研究を中心に行う予定である。
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