研究概要 |
都市や地域の発展の基盤ともいえる交通インフラストラクチャーは,さまざまな要因にともなって変化していく。技術革新によって新しいインフラストラクチャーが生まれ,経済発展の結果としての利潤がそのインフラを整備するために投じられる。整備された交通インフラはさらなる経済発展を促し,これがまた新たな交通インフラの充実を可能にする。つまり,交通インフラと都市や地域の発展の間には相互既定的な関係があり,好循環がつづくかぎり都市・地城と交通インフラは拡大の方向に進む。 本研究は,都市・地域発展と交通インフラの相互関係を第2次大戦後から今日までの期間を対象として地理学的視点から明らかにすることを目的としている。都市の発展過程を考えるとき,交通や通信など生産や社会に関わるインフラの存在はきわめて重要である。両者を結びつけながら考察することは重要と思われているが,実際にその相互関係をインテンシブに行った研究は,地理学分野では多くない。本研究は,名古屋市とその周辺地域を対象として,上記の目的を達成するために実施するものである。 戦災復興事業から都市づくりを開始した名古屋市では,市内電車やバスの復活につづいて地下鉄の建設に取り組んだ。地下鉄は主要幹線道路に沿って建設されていき,それにともなって市内電車の廃止が進められた。また,予想を超えるモータリゼーションの普及は都市高速道路を必要とした。しかし市民の合意は簡単には得られず,建設計画が実施に移されるまでに10年以上の歳月を要した。財政的制約のために地下鉄や都市高速道路の建設が困難になったあとは,基幹バスやガイドウエーバスが公共交通手段として導入されるようになった。
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