本年度は、本科研の最終年度に当たる。夏期にこれまでの成果の一端を示すべく、ボッフム大学(ドイツ)で開催された日独地理学会において、Changing the commercial strip for youth flavour : the landscapes of alternative socio-cultural conjunction in metropolitan area of Japanと題する報告を行い、討議および意見交換を行った。本報告は沖縄の一番の繁華街である国際通りから分岐する衰退商店街が、ここ15年程の間に「若者化」とでもいえる、特定の年齢層をターゲットとする店舗の増殖によって、賑わいを生み出していく様相に着目し行った実態調査であるが、この現象が、沖縄だけでなく、日本全国の一定規模以上の大都市圏(100万人規模以上)において共通して見られることであることについても言及した。これもまた景観変化の現象に関するものであり、本科研のキーワードである民俗地理およびごくローカルな場所アイデンティティの分節化の一形態であると報告者は考える。 当初の計画では、奄美から八重山までの広範な地域の民俗地理と地域意識の把握を目指したが、最終年度においては、大きく転回することとなった。従来の、民俗に関する研究では、年齢ごとに異なる生活様式の仔細、特に場所に関わる問題については記述されることが少なかった。関連する事項として、毛遊びの具体的な場所などについても記録しておく必要があるだろう。浮島通りのような対象も、年齢特化的で、その点で、新たな風俗/民俗に関する地理学的研究領域の開拓対象と考えることも出来る。むろん民俗と風俗は異なるという意見もあろう。風俗は一時的なものであり流行するものであり、民俗は不易なものであると。だが日々グローバルな流れの中で変動していく現代にあって、新たに形成、あるいは既存のものを変形していくかたちで現れてくる場所や景観への関心をつねに有しておく必要はあるだろう。今年度の研究は、まさにこの問題について一歩踏み込んでいくこととなった。
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