研究課題
基盤研究(C)
本研究は、琉球列島を事例に、地域アイデンティティの形成と民俗地理の分節化という二つのテーマについて、はじめに、地域アイデンティティの基盤となる郷土概念の歴史的形成過程とその後の展開の諸相の両面の検討を行った。1900年代中葉からの内務省主導による地方改良運動を概念形成の嚆矢とし、1920年代に農村部の生活様式や民俗への関心がアカデミアの内外で顕著になる中、1930年代に文部省主導の郷土教育運動が興り、郷土に関する教育が制度化されることとなった。郷土教育は身近な生活空間への愛着を謳い、それを喚起させるモジュールを装置化することを目的とし、そこから連続的にモジュールの空間尺度を拡大し、皇道に沿った国家/国土への情緒的な愛着心の涵養をも目指すものであったが、ここでは形式的な空間的範域への情動的なつながりをモジュール化し身体化する作業が反復されるその機制を明らかにした。民俗地理が分節化されるのもこの契機を介してである。つぎにその今日的展開の一事例として、1990年代後半の「沖縄イニシアティヴ」なる保守派のマニュフェストをめぐる論争を取り上げ、地域アイデンティティが顕在化し動員されるそのコンテクストの分析を行った。その結果、それが沖縄県政のヘゲモニー争奪の政治的道具として用いられただけでなく、中央政府との関係における県民の歴史認識の修正をもくろむものでもあったことを明らかにした。また、民俗地理の現代的様相を把握するために、現代の若者文化を民俗と捉えることで、民俗が今日直面する概念的妥当性を検討した。民俗とは、ある種空間的な範域を設定して語られてきた「物語」ということが出来るが、今日の民俗地理は年齢階梯的契機により強く影響を受けながらも、なおかつ特定の場所性を必要とすることを「ストリート」の若者化を事例に考察した。
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Bulletin of the faculty of letters, Kobe university 31
ページ: 1-18
Bulletin of the faculty of letters(Kobe university) 31
Japanese Contributions to the history of geographical thought 8
ページ: 102-111
社会学雑誌(神戸大学社会学研究会) 20
ページ: 111-124
Japanese Contributions to the History of Geographical Thought 8
Sociological Review of Kobe University 20