本研究の目的は、中国における都市農村関係の新たな展開を実態的に解明することと、その将来像を考察するための地理学的な枠組みを提示することにある。 今年度前半には中国における都市農村関係の展開について、主に文献を利用して整理を進め、その概要を論文「中国の出稼ぎと都市農村関係」にまとめ公表した。 今年度後半には、実態的な把握を行うべく、2度にわけてそれぞれ2週間のフィールド調査を中国南京において行った。 第1回のフィールド調査は9月16日から9月27日にわたって行われた。南京大学城市与資源学系の崔功豪教授・曹栄林教授と南京の都市発展と都市農村関係について研究交流を行い、南京大学図書館・系資料室において資料の閲覧・収集を行った。さらに市街地の拡大を河西新区と仙西新区などの開発地域において具体的に観察した。また農村の変化とその地域性について、南京の近郊農村と遠郊農村において予備的な調査を行った。帰国後、収集した資料の整理と並行して、この調査をもとに短報「中国農村に暮らす人々の現在」を執筆した。 第2回のフィールド調査は2月26日から3月12日にわたって行われた。今次調査の重点は都市近郊農村の変化に置かれた。南京大学城市与資源学系の協力を得て、南京東郊に位置する麟麟鎮の1村落において、近10年の就業構造変化や産業構造変化について、農家訪問や農地観察などの調査活動を行った。帰国後は、収集資料の整理と分析を鋭意進めており、あわせて南京の都市化に関わる論文を執筆中である。
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