本研究は、中国における都市農村関係の新たな展開をフィールド調査を通して実態的に解明した上で、その地理学的な分析枠組みを提示することを目的としてきた。フィールド調査は南京とその周辺農村において行われた。第1年度においては、総合的観察と都市近郊に位置する江寧区麟麟鎮においてフィールド調査が行われた。第2年度においては、遠隔農村である六合県竹鎮鎮において重点的なフィールド調査が、さらに上記2つの農村における補充調査と、鼓楼区江東開発区における比較調査が行われた。フィールド調査を通して次の諸点が明らかとなった。 1.南京の都市発展は1990年代において急速に進展し、その結果、都市拡大が全面的な展開を示す一方で、内的には居住分離に象徴される分化が生じていることが明らかとなった。この点については『研究年報』40号に論文を発表した。 2.近郊農村においては、従来の穀物生産に特化した純農村的な状況から近郊農村的な性格が強まっており、農業構造については野菜生産が重要な位置を占め、労働空間については非農業部門における就業が壮年層まで拡大し、若年層においては都市就業が多くなっていることが見いだされた。この点については、年度末に開催された「日本地理学会春季学術大会」において報告を行い、さらに『研究年報』41号に詳細を発表した。 3.遠郊農村においては、農業の相対的な低下が生じ、それが広汎な出稼ぎとして結実しているが、この機制に関して都市の編成力は限定的なものに止まっている。 今後、未発表の第3点の公表を含めて、こうした知見に基づいて中国における都市農村関係の変遷に関して、その空間的な特徴の解明に取り組んでゆく。
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