研究概要 |
本研究の目的は,近年における華人社会のグローバル化に伴って,国内および世界各地の従来の華人社会およびチャイナタウンが、いかに動態的に変容しつつあるかということについて考察することであった。 本年度は,研究計画の最終年度にあたり,これまでの文献資料の収集およびフィールドワークで収集したデータを整理しながら,補足的なフィールドワークを実施した。 海外におけるフィールドワークでは,最近来日する華人の主要な出身地となっている中国東北地方の遼寧省大連や黒竜江省ハルビンにおいて,資料収集を行った。また,北京では,北京大学や僑務弁公室において,最近新たに中国から海外へ移住・留学するいわゆる「新華僑」の動向や、海外華人社会と中国との相互関係などに関する最新の情報を得ることができた。 このほか,国内においては,横浜や長崎など伝統的な華人社会の変容について追跡調査を続行するとともに,東京の池袋や新宿の華人ニューカマーズの集住化に関する調査を行った。特に「池袋チャイナタウン」の形成について注目して研究を進めた。 これまでの研究により,世界各地で新たな華人移民が増加するにつれ,旧来の伝統的華人社会は大きく変容し,華人社会の多様化が急速に進んでいることが明らかになった。また,グローバルスケールでみた場合,華人新移民の増加に伴い,都市中心部に形成されたオールドチャイナタウンとは別に,郊外を中心に,ニューチャイナタウンが形成されつつあることが明らかになった。 これらの成果については,2005年3月末に刊行の『華人社会がわかる本』(山下清海編,明石書店)において公表予定である。
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