研究概要 |
本研究の目的は,機械工業の基盤的産業・企業が集積する地域における,産業集積の活性化に対する産業支援システムの地域的な役割を,各地独特の集積構造と支援システムとの相互作用を考慮した地域間比較によって,解明することにある. 平成14年度は,地域間比較の作業を除いて,(1)概念的な枠組みの構築と(2)産業支援システムの再構築の試みと地域的役割の調査・実証研究の2つについて研究を実施した. まず(1)に関しては,代表者は新制度学派の理論的研究と"learning region"をめぐる議論を,分担者2名は集積地域の実証研究(末吉:工業関係,加藤:サービス産業関係)をそれぞれ整理・検討した.ここでは,従来の研究が産業支援「施設」および企業間ネットワーク形成の研究に留まっており,支援システムの意義と機能,なかでもそのソフトな機能(支援プログラムの内容や,支援担当者の役割・関与,地域内「相互学習」における支援側と企業との相互作用),さらに集積企業群と支援システムとのインターフェースに関する研究が皆無に等しい状況で手薄であることが明らかになった.平成15年度の前半に,代表者がこうした成果をまとめて発表する予定である. (2)の実証研究では,当初予定の北関東の2地区(桐生・太田地区,日立地区)での組織的な協力が得られないことから,東北の花巻・北上地区(岩手県),米沢地区(山形県)の2地域に絞って,夏と冬にそれぞれ2回の調査を実施した.ここでは,「官」あるいは「学」主導により,立ち上がった支援システムが次第に「民間」を巻き込んだものへと進化している花巻・北上地区に対して,民間主導で展開した支援システムを次第に「官と学」とが補完するかたちで進化させている米沢地区,という産官学連携の好対照な発展経路を辿ったことが明らかになった.すでに,米沢地区における民間主導の支援システムの展開については代表者(平成13年度:独自研究による論文)と分担者(末吉,平成14年度)がそれぞれ発表した.平成15年度の前半に,代表者が花巻・北上地区に関する支援システムの発展とその現状をまとめて公表し,次年度の本格的な比較研究のための基礎にする予定である.
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