20世紀前半期の中国は、清朝崩壊と民国成立という混乱期にあり、民国が成立したとはいえ、軍閥間の内戦や土匪の増大による政治的社会的不安がその混乱に拍車をかけた。その一方で列強の進出が多方面にみられ、それが伝統的中国を近代化させる刺激にもなった。 本研究は当時の混乱下の中国各地を踏査調査した東亜同文書院生達の生々しい日記と調査旅行記録の内容をベースに、中国の近代化の諸相を把握するとともにその中に見出される地域原理を少しでも明らかにしようと試みた。そのさい、近代化の局面を軍閥にかかわる部分と金融システムの近代化にかかわる部分に焦点をあてた。それらの結果は次のようにまとめることができる。 1.軍閥は単なる軍事政権ではなく、それぞれの領域内では道路の改良や都市計画、公共施設の建設や整備を行うケースがみられ、とくに複数の軍閥が平行する四川省では各軍閥がそれぞれ近代化を競争してすすめている例がみられる。これは軍閥指導者が日本などへの留学経験者で、日本の近代化を直接経験したことの実践ともいえ、そのような動きが、各地方の近代化を支えた。 2.伝統的山西省商人による金融システムは清朝崩壊とともに弱体化し、上海を中心にした列強資本に応じる新銀行が芽生え、山西省商人のシステムをカバーする形で各地へ拡大した。中央銀行も成立するが、貨幣の統一はなされず、内乱の中で再編成の試みが華北や華中ですすめられるに留った
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