1.平成15年度は、20世紀前半期における中国の近代化の流れの中で、またそれがつくりだす地域システムの解明のために、金融機関の再編成過程に着目し、その特性とそこに示された地域像を検討した。なお、そのさいのデータは東亜同文書院生の旅行記録・報告から読みとり、利用した。 2.それらの研究作業から以下のような状況が明らかになった。 (1)清朝時代には清朝政府のバックアップにより山西商人が「票荘」を介して華中・華北をコントロールし、為替のみならずその利益を資金として金の貸借も行なうようになった。一方、外国資本の進出にともない、上海では両替業務を主とする「銭荘」と称する金融組織が発展しつつあった。 (2)辛亥革命によって、清朝政府が倒れると、支えを失った山西系「票荘」は力を失い、「銭荘」がそれに代る金融組織となった。外国資本も「銭荘」に資金を貸与し、「銭荘」をコントロールする面もみられた。 (3)外国資本と対抗するため、清朝末期に「新式銀行」がつくられていたが、それが辛亥革命後各地に設立された。 (4)庶民金融も伝統的にみられ、それが組織化された「銭荘」、民族資本としての「新式銀行」、それに外国銀行が共存する状況が1920年代に生じた。
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