研究概要 |
わが国において現在進行中の「平成の大合併」に対して資料提供を行うために,2002年8月にドイツの市町村の実態調査を行い,ある程度成果を得た。予想していたように,西ヨーロッパでは1970年ごろに人口8000人程度を目標とした市町村合併を行って以後,わが国のように再度合併を推進しようとしている国はなく,ドイツでは当時の行政地域改革によって形成された二重式市町村が依然として維持され,単一自治体への移行はほとんどないことが判明した。二重式市町村には上位の組織が市町村連合として強い力を持つものと,ただ単に共同の行政機関を行うだけのものとがあるが,いずれもその運営にはかなりの努力を要する。それにもかかわらず,二重式市町村が存続するのは「市民に身近な政治(Burgernahe)」の思想であり,高度な近代的行政のために上位組織をおいている。単一自治体においてさえ地区制度によってある程度の自治が認められている。わが国では,こうした「自分たちの地域は自分たちの手で」治めねばならないとする地方自治の思想が十分に成熟していないのを感ずる。 ドイツ調査に多くの時間を要したため,国内の市町村合併に関する調査はあまり行っていない。雑誌「地理」の合併特集号には,財政力指数と合併要綱の分析によって,大合併後においても財政の改善はあまり期待できないことを明らかにし,生活圏や地域アイデンティティを無視した財政問題主導の「平成の大合併」について批判的な意見を述べた。これまで,新産都による広域合併を行った倉敷市や広域連合を捨てて合併に走る広島県高田郡6町の動向などを調査しており,来年度は国内の調査をさらに進める予定である。
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