前年度のパイロットスタディにより、実現困難であることが判明したデジタル写真測量技術による直接的DEM抽出の代わりに、地図業者との連携による古い空中写真→アナログ図化機による等高線生成→デジタイズ→DEM生成という地形改変前のデータ生成手法がほぼ確立された。本年度は、前年度に得られた釧路のデータの解析を進めてその有効性の検討を続けると共に、前述の手法による仙台市北部の地形改変前のデータ生成を行い、1978年宮城県沖地震の被害について解析を行っている。(下記の地震発生及び次の宮城県沖地震発生の切迫度を勘案し、当初予定していた神戸市の代わりに、仙台市の事例解析を優先した。) 本年度は、5月に三陸南の地震、7月に宮城県北部の地震が発生し、とくに後者により、まさに本研究の対象である地形改変地において大きな被害が発生した。そこで、日本建築学会の被害調査ワーキンググループに参加して、地盤変状を含む被害調査とその解析に注力した。その結果、震源直上の旭山丘陵地域において、地形改変と強く関わる被害発生伏況を捉えることができた。すなわち、丘陵の緩斜面や谷底低地に展開する古くからの農家を含む集落においては、斜面のきわめて小規模な地形改変(家の裏を切り取って前に盛土)によって宅地を得て(広げて)いるが、その盛土部に地盤変状(沈下や亀裂)が発生し、建物に被害が及んでいるものが多い。建築年代と併せて建物直下の地盤変状の有無が、建物被害の有無(軽重)に強く関係していることを実証した。一方、大規模な地形改変による新しい住宅地では、塵物に重大な被害が及んだものはないが、道路や敷地の亀裂などが、切土・盛土境界部と盛土部に集中し、切土部にほとんど発生しないことを明らかにした。併せて、地震直後の被害調査手法についても検討した。
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