研究概要 |
今年度は,まず十勝平野南部における土地改変の歴史的な経緯を明らかにするため,歴史史料や,文献資料などの収集を行った.さらに,明治以降に発行された地図等を収集して,この地域における土地利用の変化をGISを活用して分析した.その結果,十勝平野南部では,明治初期開拓期よりも,むしろ第二次大戦後の1950〜60年から大規模な土地改変によって農地が広がったことを確認した. また,当縁川河口域の当縁湿原において詳細な堆積物の記載と火山灰との層序関係調査を行い,堆積物中に含まれる環境同位体(137Cs)の分析を行った.その結果,当縁湿原の自然堤防堆積物の堆積速度が,1968年ごろより上昇していることが明らかになった.これは大規模土地改変の開始時期と重なる.さらに,この自然堤防堆積物を主に構成するそ粗粒物質の給源を明らかにするため,自然堤防堆積物および上流の各支川の浮流土砂の粒度分析を行った.その結果,粗粒土砂の主要な供給源は当縁幌内川であることが明らかになった。 さらに当縁湿原の自然堤防上に生育するヨシの遺伝子と,湿原内部のヨシ遺伝子を比べると、堤防上には湿原内のヨシとは遺伝子の異なるものがあり,この堤防上のヨシと遺伝子が類似するものは、上流の当縁幌内川にしかないことも明らかになった. 当縁湿地における最近の急激な堆積現象は,戦後,上流の当縁幌内川で行われた土地改変に関係して生じたものであり,土砂の供給とともに,ヨシの下流への侵出も行われたことが明らかになった.
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