本研究では歴史時代の気候変動に関して、気候災害・民間行事とのかかわりから解明することを目標とした。その基礎として、気候災害の記録をコード化してパソコン入力し、従来の『歴史気候データベース』を充実させた。これらより客観的な気候の復元を行うため、災害記録の持つ意味や、変動と当時の人々や社会とのかかわりの解明を行った。 歴史時代の気候災害の痕跡は、各地に継承されている民間行事にもみられる。たとえば富山ではフェーン災害に対して風鎮めの祭りが行われている。こうした民間行事と気候とのかかわりは多様なため、その意味をさまざまな角度・視点から検討した。とくに風祭について富山で調査を継続するとともに、多方面からアプローチして分析した。この風祭の斎行される地には風神が祀られ、風神はさらに水神などの性格も包含している。祭祀では基本的に五穀豊穣のため安寧が祈願され、そこには農業社会における、気候災害への認識の投影がみられた。 これら複合的性格の神仏が祀られる霊地を廻って、各地に霊場が開創されている。こうした霊場にも人々の気候災害を含めた自然への認識が反映されており、とくに自然とのかかわりに注目して、諸霊場の実態調査を行った。また、全国的規模においても神杜や寺院などのデータベースを作成し、さらにGISに取り込んで名社や宗派など諸要素の分布図を作成した。こうした分布図は従来呈示されたことがなく、予想とは異なる結果が多数得られたが、汎用的な基礎データとして、諸分野の研究に資するものと考えられる。
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