研究概要 |
ベビーカーや介護タイプ車椅子に代表される移動補助機器の利用者(搭乗者)の乗り心地を評価する生理指標として心拍変動(Heart Rate Variability)に注目し,一般的に実施されている主観評価に比べて再現性の高いことが期待される乗り心地評価指標の検討を実施した。研究の最終目標をベビーカーの乗り心地の向上に置き,その基礎的知見を明確にするための介護タイプ車椅子による屋内外における乗り心地評価および振動伝達率測定,HRV測定実験を実施した。被験者は健常成人男性6名(22〜24)として,心電図は生体アンプ(デジテックス研究所、BA1008)で増幅し、データレコーダ(ティアック、DRC2)に記録した。測定条件は、安静時、鋪装道路走行時、インターロッキング走行時の3種類とし、それぞれにつき10分間測定した。呼吸は4秒間に1回のペースに保つように呼吸統制を行い心電図測定および主観評価を行った。評価項目は振動に対する身体各部位(頭部、胸部、腹部、腕部、大腿部、下腿部)の揺れる感覚、安定感、緊張感、安心感、疲労感、総合的な乗り心地とした。路面条件を要因としてLF/HF(交感神経指標)について行った分散分析では有意な主効果を見出すことはできなかったが,t検定より一般的な舗装道路走行時と比べてインターロッキング走行時においてLF/HFが増加することが求められた(P<0.05)。またLF/HFと主観評価の項目で重回帰分析を行った結果、LF/HFに対し胸部・疲労感・安心感が説明変数となる傾向を示した(P=0.068)。また、伝達率と心拍変動との相関関係について検討したところ、3.2Hzの伝達率とLF/HFの値に有意な相関が見られた。3〜4Hz付近の振動の増加にともない、LF/HFが増加し不快な振動である傾向を示し、心拍変動が乗り心地を記述する生理指標の一つとなりうることを示唆することができた。
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