羊毛の水洗い対応加工がその汚染性と水系洗浄性に及ぼす影響を検討した。羊毛ギャバジンとその脱スケール加工布、BAP加工布を、油脂・カーボンブラック・関東ローム粘土の混合汚れを用いて水分散液から浸漬法とローラー法により汚染した。これら汚染布を家庭洗濯を想定した条件で水系洗浄し、汚れ落ちに及ぼす各種洗浄条件(界面活性剤濃度、水の硬度、機械力)の影響からその洗浄特性を把握した。洗浄には撹拌式洗浄試験機を使用し、比較のために商業洗濯を外部委託した。洗浄率は目視判定に対応するK/S法と、油脂のエーテル抽出および土壌に含まれる酸化鉄粒子の蛍光X線分析により求めた。 羊毛は防縮加工によって汚れやすくなり、土壌粒子付着量は1.5倍、モデル皮脂付着量は2〜2.5倍に増大した。防縮加工によるスケールの除去や樹脂被覆によって、羊毛繊維の表面形状と物理化学的性質が変化し、汚染液や油性汚れの浸透性が増したためである。 水系洗浄による汚れ落ちも防縮加工によって低下した。未加工布の洗浄率はK/Sとモデル皮脂が40〜50%、土壌粒子が60〜80%であったが、脱スケール加工布の洗浄率はこれよりも有意に低く、BAP加工布の洗浄率はK/Sが10%以下、モデル皮脂が20%以下、土壌粒子が30〜40%ときわめて低かった。洗浄率を高める方法として、濃縮洗剤液への漬け置きが示唆された。防縮加工の有無と方法に関係なく、K/Sとモデル皮脂の洗浄率は同等、土壌粒子の洗浄率はそのおよそ2倍であり、汚れ成分の性質と粒度の違いによって洗浄率が異なることが確認された。また、ドライクリーニングは、未加工布の汚れを80%以上除去するのに対して、防縮加工布のK/Sと土壌粒子の洗浄率は30〜60%にとどまり、水洗い対応加工布の汚れはドライクリーニングでも十分には除去できないことが判明した。
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