ドライクリーニング溶剤による水や土壌の汚染を防止する観点から、羊毛製品の水系洗浄が見直されおり、その汚れ落ちを評価するための標準汚染布を試作した。JIS C 9606に準じたモデル皮脂・カーボンブラック・関東ローム粘土の混合汚れを用い、水分散液から浸漬法とローラー法により羊毛布とその水洗い対応加工布を汚染し、カーボンブラック量も調整して、汚染度の異なる両面汚染布と片面汚染布を作製した。これら汚染布を、家庭洗濯を想定した標準的な条件で水系洗浄し、汚れ落ちに及ぼす各種洗浄条件(界面活性剤濃度、水の硬度、機械力)の影響からその洗浄特性を把握した。洗浄には撹拌式洗浄試験機を使用し、家庭洗濯との比較として商業洗濯のウェットクリーニングとドライクリーニングを外部委託した。洗浄率の評価は、目視判定に対応するK/S法に加えて、油脂のエーテル抽出と土壌に含まれる酸化鉄粒子の蛍光X線分析からおこなった。 汚れ負荷の少ない片面汚染布は両面汚染布より洗浄率が高く、表面反射率の高い汚染布ほど洗浄率が高い傾向が認められた。防縮加工の有無と方法に関係なく、K/Sとモデル皮脂の洗浄率は同等で、土壌粒子の洗浄率はその2倍となり、汚れ成分の性質(カーボンブラックと油脂は親油性、酸化鉄は親水性)と粒度の違いによって洗浄率が異なることが確認された。 羊毛の防縮加工はモデル皮脂と土壌粒子の付着量を増大させた。スケールの除去や樹脂被覆によって羊毛繊維の表面形状と物理化学的性質が変化し、汚染液や油性汚れの浸透性が増したためである。水系洗浄による汚れ落ちも防縮加工によって低下し、とくにBAP加工布の洗浄率はきわめて低かった。防縮加工布はドライクリーニングの洗浄率も高いとはいえず、水系洗浄における汚れ落ちを高める方法として濃縮洗剤液への漬け置きが示唆された。
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