本研究は、全国59地域の比較調査と甲府盆地における典型調査から、盆地の生態系やコミュニティ意識が育む住空間の構成原理や住生活実態について、総合的に考察することを目的としている。 本年度は研究期間の初年度として、(1)盆地地域の住まいや住生活問題に関する関連文献の収集・分析、(2)全国盆地都市の現地調査、(3)甲府盆地の気候風土に調和した木造住宅のあり方について重点的に検討した。主な研究成果は以下の通りである。 1.地理学や建築学、都市計画分野の関連文献を収集した。この結果、地理学分野では盆地について一定の研究蓄積が確認できたものの、盆地の生態系や住文化に着目した学際的な住宅研究は見られなかった。2.甲府盆地については市町村史を資料に「民家」の伝統的な空間構成について整理した。3.盆地の性格づけを行うために国勢調査等の基礎統計を整備し、全国の盆地都市の類型化を試みた。4.住宅統計年報を用いて山梨県内64市町村の住宅建設実態を地域的・経年的に分析した。5.宮崎県えびの市、北海道富良野市、長野県松本市及び塩尻市を対象に、地域固有の住生活課題に関する現地調査及び住宅施策担当者へのヒアリング調査を実施した。「ふらのの家」など、住宅マスタープランを策定した盆地都市では風土に根ざした住まいづくりに取り組んでいた。6.京都市では京都の歴史・風土に育まれた町家の保存状況や活用に向けての行政及び市民団体の取り組みを調査した。7.全国の市区町村住宅マスタープラン報告書から地域に根ざした住まいづくりの構想を抽出し、データベース化した。8.山梨県の「甲斐の家2002」プロジェクトに参画し、県民によるアイデアをもとに山梨県の気候風土に調和した木造住宅を提案した。
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