本研究は甲府盆地を中心とした実態調査及び他都市との比較分析から、盆地の気候風土や歴史、文化、生活様式に根ざした住空間の構成原理と住生活実態について、多面的かつ実証的に考察した。3ヶ年の主な研究成果は以下の通りである。1.住宅・土地統計調査及び建築統計年報を利用し、全国の盆地都市及び山梨県の住宅事情を分析した。2.山梨県内3地区の現地調査結果より、民家の屋敷構えや住み方の地域的特徴を明らかにした。また竜王町における伝統的民家の空間構成について考察した。3.県内の大工・工務店が建設した木造戸建て住宅の平面図を収集し、敷地・住宅規模や平面構成等の地域別特徴と変容過程を明らかにした。4.山梨市内2地区の居住者アンケート調査より、盆地の住環境評価や年中行事等の住生活実態を把握した。5.山梨県内の建築士を対象に実施したアンケート調査より、山梨県の気候風土や敷地条件、最近の住宅建設状況等を把握するとともに、盆地の気候風土に対応した木造住宅の設計事例集を作成した。6.県産材住宅の供給実態や県産材に対する居住者の意識、居住性評価について検討した。7.山梨県の「甲斐の家」プロジェクトを対象に地域に根ざした木造住宅に対する県民ニーズを明らかにし、建築士・、林業関係者・住民等との協働作業によって「甲斐の家」を提案した。また甲斐の家モデルハウスの建設過程を記録し、空間分析・評価と住み方シミュレーションを行った。8.住宅マスタープランの策定による地域型住宅への多様な取り組みを示した。9.中学校及び高等学校の家庭科教科書を対象に地域に根ざした住まいや生活文化に関する学習内容を調査・分析した。また山梨県の気候風土に対応した住教育実践事例を把握し、地域性を生かした住教育の可能性を示した。
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