本研究は、環境保全を考慮した吸水性衛生材料の性能設計システムの確立を目標とする。ここでは、吸水性衛生材料として寝たきり高齢者・乳幼児用おむつ、トイレット紙、紙タオル等の不織布材料の性能設計に着目した。 おむつについては、繰り返し使用できる布おむつや布製パッドと紙おむつの併用を念頭に、市販の布おむつ・布パッド数種類について表面・力学特性と吸水性の範囲と特徴を捉えた。布パッドはドビー織おむつに比べて含水時の摩擦係数の増加が少なく、紙おむつとの併用に関する基礎資料を得た。また、乳幼児健診受診者205名を対象におむつの使用に関する聞き取り調査を行った。紙おむつの使用は八割を超え、二割はごみの増加を認識しているが、家事労働を軽減するために紙おむつを使用している実態を捉え、環境教育の必要性が示唆された。 トイレット紙については、成人女子50名を被験者として肌触りの良否の主観評価を行ない、主観評価値と素材特性との関係を捉えた。さらに、素材特性から肌触りの良否を客観的に予測する実験式を導いた。また、再生紙による製品は純パルプ製品より肌触りが悪い傾向が示されたが、再生紙でも評価の高い試料があり、再生紙の性能向上に関わる具体的指針を得た。 紙タオルについては、男女大学生30名を被験者として使用感に関する主観評価を行ない、主観評価値と素材特性との関係を捉えた。紙タオルの肌触りの良否は表面摩擦係数の変動、曲げ・せん断剛性と有意に相関し、これらの値が小さいほど柔らかく滑らかであると評価された。古紙品でも評価の高い試料があり、再生紙の性能向上に関わる具体的指針を得た。また、10〜50歳代100名を対象にした紙タオルの使用に関するアンケート調査から、20代以下の若年層にハンカチの携帯率が低い傾向が捉えられ、環境学習の必要性が示唆された。
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