研究概要 |
固体粒子汚れの水系洗浄に関して、幾何学的に単純なモデル洗浄系を用いて実験を行い、優れた洗浄システム開発のための基本的情報を得た。洗浄基質としては水晶振動子の電極表面にスピンコート法により作成した高分子膜(ポリエチレン、ナイロン6およびアセテート)、並びに市販の高分子板(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレートおよびナイロン6)を用いた。洗浄過程の中で固体粒子汚れの再付着を取り上げ、モデル汚れとして球形のポリエチレン粒子およびナイロン粒子を用いて、水中での各高分子表面への粒子付着数を調べた。 粒子再付着を抑制する方法として高分子表面の親水化と洗浄媒体(水)の極性低下に注目し、前者については172nmのエキシマ紫外光照射による表面処理、後者についてはエタノールの添加を試みた。エキシマ紫外光照射により高分子表面の形態変化は殆どないが、表面酸素濃度が増大してぬれ性が著しく増大することがわかった。粒子付着性は、粒子や基質の種類により大きく異なるが(第1回応用物理に関する国際会議(2003年10月、バダホス、スペイン)で発表)、いずれの組み合わせでもエキシマ紫外光照射やエタノール添加により著しく再付着が抑制されるという結果が得られた(第4回表面改質に関する国際会議(2003年6月,オーランド、アメリカ)で発表)。この結果は粒子、基質、媒体の表面自由エネルギーのLifshitz-van der Waals成分、酸成分および塩基成分から算出した付着に伴う自由エネルギー変化で基本的に説明できた。
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