研究概要 |
家族が担ってきた高齢者の介護を社会が担う目的で,平成12年4月に公的介護保険制度が創設され施行された。厚生労働省「介護給付費実態調査報告」によると、保険施行以降、介護サービス受給者数は次第に増加しており、介護需要が大きいことが示されてきている。しかし,特に居宅サービスの場合、要介護度別に必要なサービス量の算定が行われそれを基に算出された支給限度額に対する利用額の割合である利用率は,平成14年4月審査分でみても40%程度でしかない。このことから.介護サービスを担う主体が,世帯の必要に応じて家族から社会へ移行したといえるのかどうか疑問が生じる。このことには,介護サービス利用者の自己負担の大きさや所得水準が影響しているのであろうか。あるいは,支給限度額の算定に問題があるのであろうか。 本研究では.高齢者介護を担う主体が保険創設の目的に沿って家族から社会へと移行し,高齢者世帯の家計が健全性を保ち,高齢者と働く世代の間で経済的公平性が保たれる高齢者世帯の負担のあり方を検討することを目的としている。 本年度においては,昨年度に引き続いて,わが国および諸外国の介護保険,介護と密接な関係にある医療保険,高齢者の生活実態に関する資料の収集を行い分析した。また.介護保険,介護サービス,医療保険,医療サービス,生活経済学の専門家から専門知識の教示を受けた。さらに、昨年度の予備調査に基づいて,広島県内および他県の特色ある市町村において,高齢者の生活実態に関する調査,介護サービスおよび医療サービスの利用実態に関する調査,介護保険に関する高齢者世帯の負担と給付の実態についての調査を行い分析した。
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